コラム3 「あたりまえの根っこ」としての進化理論
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橋彌和秀
高校生のときに臨床心理学に興味
3回生になった前後
リチャード・ドーキンスの『利己的な遺伝子』
膨大な知見が紡がれる面白さ
「自己意識」や「文化」までも論じてしまう大胆さ
立花隆が(ノーベル賞受賞直後の)利根川進へのインタビューをまとめた『精神と物質』
分子生物学の実験デザインの美しさ
松沢哲郎の集中講義
初めてチンパンジーの心理学的研究の話を聞いた
当時大学院生だった伏見貴夫に教えてもらったジョン・R・クレブス & ニコラス・B・デイヴィス『行動生態学』
この頃に至って要約、「臨床心理学は科学ではない」ということと、「臨床的な態度は自分には向かない」ことに気づいた
霊長類研究所の大学院に進んでチンパンジーの心理学実験を始めた
『種の起源』を精読
ポスドク以降は主にヒトの赤ちゃんや子どもを対象にした研究に移行
コミュニケーションや「こころという内的情報処理システム」の進化・発達的基盤に行動実験の手法でアプローチしている
自分が進化心理学者だと思ったことはない
デイヴィッド・プレマックとニコラス・ハンフリーとダン・スペルベルを思い浮かべる
Theory of Mind研究、『ギャバガイ!」(プレマック著)、『内なる目』(ハンフリー著)、社会的知性仮説
金沢創から『関連性理論』(スペルベル)を教わった
この3人の巨人に共通しているのは、明晰な哲学的思考と自然科学的な方法論とを両立させて独創的な研究を成し遂げつつ、かつ、まっとうな自然淘汰理論がそれぞれの根幹にあること
しかし、一方で彼らを「進化心理学者」と呼ぶ人はいない
進化心理学者を名乗らなくても、自分なりの思考の基盤としての進化理論と方法論とを内に根付かせて、オリジナルな研究をささやかに提示する、あたりまえの自然科学者の一人でありたいと思っている